よく本を読むものの、読んだ後にあまり記憶に残らない。面白かったとか、感動したとか、そういう漠然とした感想はあるんだけど、「どこがどう良かったの?」と聞かれると困る。なので、どうすりゃいいかを求めて「本を読む本」を読んだ。(ちなみに、原題は"HOW TO READ A BOOK"であり、これ以上ないくらいこの本が何の本なのかを表している。)
本書は、1940年米国で刊行されて以来、世界各国で翻訳され読みつがれてきた。読むに値する良書とは何か、読書の本来の意味とは何かを考え、知的かつ実際的な読書の技術をわかりやすく解説している。初級読書に始まり、点検読書や分析読書をへて、最終レベルにいたるまでの具体的な方法を示し、読者を積極的な読書へと導く。単なる読書技術にとどまることなく、自らを高めるための最高の手引書。
(本書裏表紙より)
読書は議論と同じく積極性が求められる活動である、というのが著者の意見のようだ。つまり、本を読むとは、あるテーマについて議論の場に専門家を呼んで対話することと同じであり、議論の参加者(自分)は専門家の主張を理解し、正誤を判断し、主張の意義を確認しないといけない。ただし、読書の場合は、積極的に議論に取り組もうにもその場に専門家はいないので、独自の技術が必要なのである。その技術、つまり読書法を教えてくれるのも本書だ。
本書で紹介されている読書法は、初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書の四段階で分けられている。初級読書はいわゆる小学校~中学校の授業で行うような普通の読書で、本書でほとんど説明していない。点検読書は、議論を始める前のアブストの確認のようなもので、表題、目次、序文、本の一部などからこれから読む本の概要をつかむための読書法である。分析読書は議論の本番であり、本の概略を掴む、著者の精神と出会う、批評をする、著者の主張の意義を問うの順で進めていけばよいようだ。シントピカル読書はパネルディスカッションに近いかもしれない。つまり、同一主題について多数の書籍を用意し、そこから主題についての結論を読者が導き出すという方法のようだ。
この本を読んでから、本と向き合う時の心持が変わったのが一番の収穫だろうか。議論の場に著者を呼んで主張してもらっていると思うと、著者と議論するために、主張を聞きながらも質問が浮かんでくるものである。そして、その場にいない著者との議論の作法も本書が教えてくれたので、著者と脳内で議論の真似事もときどきやってみたりしている。そういうような本の読み方をすると、今までよりも気づきも多く、読んだ内容が記憶にも残っているようだ。