なぜサターンパッドの操作性は他と異なるのか ~特許から読むサタパの十字キー~

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1994年に発売されたセガサターンに付属していたコントローラー、通称サターンパッド
今更そんな昔のゲームパッド使うやついないって?
それがそうでもないんです。

その証拠にサターンパッド風のゲームパッドが現代でも複数発売されてるし、GEEKY Fab.のサターンパッドUSB化基板の頒布数も通算数百個にのぼります。
僕自身もSwitchやSteamで2Dゲームをするときはよく使います。
(最近はもっぱらサターンマルコンを使いますが。)

根強い人気の主な理由は前面に配置された6ボタンと、素早く正確な操作を実現できる十字キーです。
はい。十字キーです。

サターンパッドといえば6ボタンに注目されがちですが、十字キーは特許にもなってるくらい工夫されたものなんです。

この記事ではサターンパッドの十字キーに込められた工夫を、特許を基に紹介いたします。
サターンパッドを使うことでゲームがうまくなるかもしれませんよ。

解説とかいらない。とにかく触ってみたいって方は↓の一覧表をご覧ください。
今手に入るサターンパッド風ゲームパッド一覧表

目次

基本的な十字キーの構造

サターンパッドの十字キーの説明の前に、まずは基本的な十字キーの構造がどうなっているかを見てみましょう。
ここではスーファミのコントローラーを例にとります。
スーファミのコントローラーの十字キーは、キートップ、導電ゴム、基板の三つのパーツで構成されてます。

スーファミのコントローラーの十字キー (シェルを外した状態)

断面から見るとこんな感じ。

キートップを押すと、キートップ真ん中の凸部分が支点になって傾き、導電ゴムが押され、基板が導電ゴムに触れたことをICで読み取ります。

サターンパッドの十字キーの構造

では、サターンパッドの十字キーはどうなってるのでしょうか?
特許として公開されているので読んでみましょう。
出願された特許は二つあります。
一つ目がこちらです。

二つ目はこちらです。

一つ目と二つ目は同じ構造で説明を変えて出願されています。
一つ目を出した後に、「この構造だとこういう効果もあるじゃないか!!」って気づいて二つ目を出願したって感じですかね。
二つ目は新規性なしと判断され特許取得には至らなかったようですが。

では特許の図から構造を確認してみましょう。
下の図のように、サターンパッドの十字キーは2番から7番の6つのパーツで構成されてます。

引用元:特開平07-262884

断面図を書くとこういう風になります。

導電ゴムが基板に触れることでキーが読み取られるのは同じですね。
異なるのが、導電ゴムとキートップの間にドーム部接点押圧部があることです。

キートップ、ドーム部、接点押圧部の現物はこちら。
ドーム部はシェルの一部です。

この構造で特に重要なのが、3番のドーム部です。

このドーム部があることで三つの効果が得られます。

応答性の向上

サターンパッドの十字キーは、中心を押しても少し凹みます。
この時、キートップがドーム部に支えられて導電ゴムが半押し状態になっています。

この状態から十字キーを傾けることで、最小のストロークでキー入力ができるようになってます。
まあ、慣れが必要な使い方ですが。
そもそも、特許読むまでこういう使い方は気づかなかったです。

私は十字キーの中心を親指で押し込みながら滑らすように入力を行っていたので、この効果の恩恵を無意識に受けてました。

実はスーファミのコントローラーなどでも同じように十字キーの中心を押せば全キーが半押し状態になります。
ただ、支点が一点なのでどのキーも押さない状態をキープするのは至難の業だったりします。

正確で精密な操作性の実現

一つの支点で傾斜運動していたスーファミの十字キーと異なり、サターンパッドの十字キーはキートップがドーム部に沿うように動きます

上下左右の入力も斜めの入力も、同じようにドーム部に沿ってキートップ部が動きます。(特許では摺動と書いてました。)
キートップ部がドーム部を摺るように動くので、思った通りの精密な入力ができるようになってるのです。

マウスが机の上を滑るときが近いイメージかもしれません。
机の上を摺って動くので、結構精密な操作ができますよね?

スーファミとかの単一支点の十字キーではこうはいかないです。

ちなみに、この効果も恩恵を受けるには、十字キーの中心を親指で押し込みながら滑らすように入力する必要があります。
端だけを押すと、キートップ部がドーム部に当たりません。

耐久性の向上

キートップとドーム部の干渉により、基板と接点押圧部に強い力が加わらないようになっています。
そのため、耐久性が上がっています

ただ、サターンパッド風のゲームパッドの中には作りが甘く、接点押圧部が折れるというレビューが書いてあるものもあります。
Amazon.co.jp:カスタマーレビュー: retro-bit SEGA Saturn® 8-Button Arcade Pad Bluetooth Black レトロビット セガ サターン® 8ボタン アーケードパッド ブルートゥース コントローラ ブラック

おそらく、キートップとドーム部の作りこみが甘いか、接点押圧部の素材に折れやすい樹脂を使ってるのでしょう。

純正のサターンパッドは接点押圧部にやや弾性を持つ樹脂を使っており、キートップとドーム部の干渉によって接点押圧部には大きな応力がかからないように工夫されています。

以上がサターンパッドの十字キーの構造と、それにより生まれる効果の説明でした。
少し使いたくなってきましたか?

今手に入るサターンパッド風ゲームパッド一覧

サターンパッドを使ってみたいという方のために、今手に入るサターンパッド風ゲームパッドを表にまとめました。
(いかにもな安物を除く)

製品 メーカー 良い点 悪い点 購入先
セガ公認USBサターンパッド retro-bit ・セガ公認 ・耐久性が低い(らしい)
・高価
amazon
サタパ風Bluetoothゲームパッド 8bitdo ・無線 ・形状が若干異なる amazon
サタパ風無線ゲームパッド 8bitdo ・無線 ・形状が若干異なる amazon
サターンパッドUSB化基板 GEEKY Fab. ・純正サターンパッドを使える
・オープンソースのため、ファームウェアの書き換え可能
・純正のサターンパッドが別途必要
・簡単な改造が必要
BOOTH
家電のケンちゃん
マルコンUSB拡張ユニット GEEKY Fab. ・純正サターンマルチコントローラーを使える
・オープンソースのため、ファームウェアの書き換え可能
・純正のサターンマルチコントローラーが別途必要
・十字キーは同じだが、パッド形状はサタパと異なる
BOOTH
家電のケンちゃん

僕のおすすめはマルコンUSB拡張ユニットです。
アナログスティックもついてるので使えるゲームの幅が広がってよいです。
あと、個人的にはサターンパッドよりマルコンの方が手にフィットして使いやすいです。
純正マルコンが手に入りにくいのが一番の問題ですね。

最後に

この記事では、サターンパッドの人気の理由の一つである独自の十字キーについて解説しました。
後日記事を読み直して気づきましたが、サターンパッドの十字キーは中心を親指で押し込みながら滑らせるように入力することで本領を発揮できるということがわかりますね。

この記事を読んで、「サターンパッド使ってみたい!」とか「サターンパッド久しぶりに触ってみようかな」とか思ってくれたらうれしいです。
一般的な十字キーとは異なる操作性を楽しめますよ。

もしよければコメント欄に「あなたの好きなゲームパッド」を書いていってください。
コメントや感想もお待ちしています。

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 拝見させてもらいましたがサタパの動作の説明はちょっと違うのではと思います。
    基本的にサタパのメインの動作の軸、接点はドーム部(3番)と接点押圧部(4番)だと思います。
    (部品が接触するのは基本的にドーム部の外側でなく内側)
    その後入力押し込み直前にドーム部3番(というかケースの内側)と接点押圧部の端が接してそこが支点となって入力になります。(左入力時右側の端)
    スーファミのコントローラーのことも中心突起部が軸と書かれてますが
    これも入力方向とは逆の端が支えになると思います。(左右上下移動の時には中心が軸となるかもしれませんが。)
    サタパもスーファミのパッドも十字キーが押し込めるということは部品が浮いているということなので中心軸になることはないと思います。
    十字キーを横から見るとどこが支点になってるのかわかると思います。
    XBOXシリーズのパッドのデジタルキーは中心軸が固定されているのでキーの真ん中が支点になりますね。
    あとレトロビットのコントローラーが壊れやすいのはもろいプラスチックを使ってたというのもありますが
    接点押圧部のドーム部の高さがセガ製より0.5mm低いためコントローラーの内側と接点押圧部の隙間が狭く、入力動作中のドーム部が接している時間より接点押圧部がケースの内側に当たっている時間が長く、当然薄い部品ですので曲げて曲げてである日ポキっといくのが真相だと思います。
    素人ファンですのでこれが100%正解とは言えませんが再考察していただければと思います。

  • サタパ好きさん
    有益なコメントありがとうございます!
    確かに十字キーの端を押すと支点はケース内側になりますね。
    私の使い方では十字キーの中心を押し込みつつ、滑らすように入力を行っていましたので、それを前提で記事を書いてしまいました。
    十字キーの端を押すような使い方ではあまり構造が生かせなさそうですね。
    記事の該当箇所についてサタパ好きさんの考察をもとに加筆修正したいと思います。
    レトロビットのコントローラーに関する考察もありがとうございます!
    記事に追加したいと思います。

  • キートップの断面には描かれていませんが表側にある十字の出っ張りの裏側には必要以上に押し込まれないように十字にフランジが立っています。またパッド本体のドームの回りにもフランジを受ける為にほんの少しだけ嵩増しが行われていて観察するとフランジが当たって傷が出来てるのが分かると思います。
    自分が持っているRETRO-BITのUSBメガドラ風8Bパッドを確認しましたが嵩増しが行われていないので深く倒され過ぎて軸に負担が行くのだと思います。更にキートップの軸がC型をしているので分解した時に「折れるだろ?」とは思いましたねw

  • 連投失礼します。メガドラの3Bパッドの場合はファミコンのパッド度同様にコマのような十字キーが直接ゴムパッドを押し込みます。しかし十字キーの裏側の押し込み用の突起が高く操作する時4方向を少しでもズレると斜めに入ってしまいヘロヘロした動きになってしまいます。だからここを僅かに削るとしっかりした8方向パッドに化けます。6Bはジョイスティックの構造とパッドの構造を上手くミックスしたんでしょうね。

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